福田次官のセクハラ問題は他人事でも政治の話でもない。あなたはどうだった?

テレビ朝日の女性社員が福田淳一財務事務次官からセクハラを受けていたとされる問題。
なんだか騒ぎになってるのは知ってるけど経緯がよく分からんって方は、ぜひこちらの記事『辞任表明をした福田財務次官のセクハラ問題 発覚から辞任に至るまで何から何まで酷かった経緯』をご一読ください。

『週刊新潮』(新潮社)が福田氏のセクハラ疑惑を完全匿名で報じたのが今月12日。そこから事態は急展開を繰り返し、1週間以上が経過した。
テレビやネットでのこの問題をめぐる報道や議論を眺めていると、次のどれかに焦点があたりがちだなと感じる。
①被害者の告発の仕方もどうなの?
②支持政党や誰が嫌いかは関係ない
③他人事じゃない

それぞれについて思うところがあるので、ひとつずつみていこう。

 

なんで告発した女性は新潮にデータ渡したの?

まず最初に「被害者の告発の方法おかしくない?」説については真っ向から否定しておきたい。
この説を唱えている人の言い分は「テレ朝の記者なのに他者に音声データ渡すのってダメじゃないの?」ってことらしいんだけど、はっきり言って全然ダメじゃない。

なんで全然ダメじゃないかっていう点については、これらの記事が分かりやすく解説してくれているのでぜひ読んでほしい。

『録音禁止ルールは誰を守るのか 記者とセクハラ、音声データ提供の是非は』(BuzzFeed Japan)

「セクハラの認定については、加害者が否認している場合、録音があれば『クロ』、なければ『シロ』くらいにまでなってしまっています」

「今回の場合、相手は事務次官で、そんな発言はしていないと言われたらおしまい。上司に訴えても報じることができませんでした。週刊新潮だって、彼女の証言だけではあそこまでの記事は書けなかったでしょう。セクハラ被害が闇に葬り去られないために、じゃあ他にどうすればよかったの、という話です」

テレ朝社員のセクハラ告発。問題なのは取材手法ではなく、セクハラする側だ。(HuffPost Japan)

《もし、口頭で被害を財務省に訴えたとしても、相手側から「名誉棄損だ」「証拠を出せ」と言われかねない状況です。身を守るために録音をしたことを責めるのは酷です》

《被害に遭われた女性社員は、財務省担当を1年以上されていたようなので、こうした財務省の体質を感じていて、自分を守るため、また権力者による人権侵害を告発するために、他の手法がないとして、やむにやまれず録音をしたのではないかと推察します》

被害を訴えた女性記者は、当初上司に「自社で報じるべきではないか」とも相談した。しかし、上司は日本のセクハラを取り巻く現状を考えてセカンドレイプなどの二次被害を心配し、報道はできないと判断したそうだ。
私は当初、この上司の判断についての説明はテレ朝の言い訳で、「二次被害の心配とか言ってるけど、もみ消したかっただけでしょ」と思っていた。

しかし、東京新聞の望月衣塑子記者が以下のようなツイートをしていた。

本当にどうしようもなかったんだろうと思う。
今の日本でセクハラを含む性暴力被害者として声をあげることに、すぐにハッピーになれるようなメリットははっきり言ってないといえるだろう。
ネットでたたかれたり、名前や住所を特定されたりする。
TBSの元ワシントン支局長からの性暴力を告発したジャーナリスト伊藤詩織さんは身の危険さえ感じ日本に住めなくなり、海外へ移住せざるを得なくなってしまった。

「他社に音声データを渡すなんてダメだろ」という人にはぜひ想像してみてほしい。
じゃあ、彼女にはそれ以外にどういう方法があっただろうか。

 

支持政党や誰が嫌いかは関係ない

新聞各社の報道やTwitter上で、この問題を反アベの材料に使ったりアベ擁護のために論点をずらしたりされているのを見かける。

これには気をつけなきゃなと思う。
論点をずらして、本質を見失ってはいけない。被害者を置き去りにしてはいけない。
大事なのは、今まで被害に遭って苦しい思いをしている人たちをどう救うか。
そして、これからの被害をどう防ぐか。それでも起こってしまったときはどうするかを考え、実行することだ。

一方で、財務省の対応、麻生氏の発言などは明確に批判されるべきだ。
例えば先日、テレ朝が財務省に対して出した抗議文について聞かれた麻生氏は「もう少し大きな字で書いてもらった方が見やすいなと思った程度に読んだ」と言ったそうだ。

これだけに限らず、この件をめぐる彼の発言はあまりにもひどい。
セクハラなんて、弱者とされている者が苦しんでいることなんて、なんとも思っていないようにしかみえない。
彼の発言はおかしい。「まーた麻生が言ってるよ」で済ませてはいけない。

支持政党関係なくこの問題について考えることと、おかしな言動をきちんと非難することは両立できるはずだ。

 

セクハラは他人事じゃない

この問題をきっかけに女性記者たちが匿名ではあるが声をあげ始めている。

「男性記者は私を差し出した」メディアの女性たちが声を上げられない理由(Business Insider Japan)

「先生、女性連れてきましたよ」

Aさんは議員の隣に座らされてお酌をさせられ、仕事の話など何もできなかった。2軒目はカラオケのあるスナックに移動し、泥酔した議員に胸を触られた。「嫌です、やめてください」と拒絶しても、議員は笑ってごまかすだけだったという。あまりのことに驚いたが、何よりショックだったのは、信頼していた男性記者たちがその様子を笑って見ていたことだ。

「メディアで働く人って大変だな」「メディアや政治の世界はまだまだ男社会だからな」
そう思うかもしれない。

でもこれはメディア関係者にだけ起こっている問題だろうか。

思い返してみると、私が以前勤めていた会社でもセクハラはあったのだろうと思う。
私自身は完全内勤だったし、会社で被害に遭った覚えはない。
でも、笑い話として伝え聞いた話がいくつかあった。
「営業先との飲み会で女性社員が場を盛り上げるためにこんなことをやったんだよ」という笑い話。

私はその話を聞いた当時、やった方もやった方だろと思っていた。
でも今になって考えてみれば、もしかしたら彼女はやらざるを得なかったのかもしれない。
そしてそれを笑い話にせざるを得なかったのかもしれない。

私が以前いた会社がおかしいと告発したいわけではない。
セクハラはそれぐらいどこでにも存在しているのだ。

また、男社会なのはメディアや政治の世界だけだろうか。
2016年の厚生労働省の調査によると、課長相当職以上の管理職に占める女性の割合は企業規模10人以上の企業で 12.1%、企業規模30人以上の企業にしぼると8.7%だ。
職場に限らず、残念ながら日本では政治や教育の場など含めまだまだ多くの場所が男社会だ。

権力などの力の差を利用して行われるセクハラやパワハラは、女性にだけ起こる問題ではない。
被害者には男性も少なくないし、男らしさにしばられて男性だからこそ被害を訴えられないというような男性特有の問題もあるだろう。
しかし、女性へのセクハラにスポットをあてたときその背景には頑然と続く男社会や女性を下にみる文化や”伝統”があることを忘れてはならない。

 

あなたはどうだっただろうか?

あまりにもたくさん、当たり前のように存在していると
「まぁ、そんなもんか」と思い始めてしまう。

毎日、全国で信じられないほど発生している痴漢。
暴言・失言がお決まりになっている政治家。
在日韓国人の方たちへのヘイトスピーチ。
学校のいじめ。
会社の上司からのいじりという名のパワハラ。

あまりにも多すぎて私たちは麻痺してしまっていた。
いや、麻痺させられてきたのだ。
「まぁ、そんなもんか。仕方ない」と。
ここではっきり言っておきたいが、これまで被害に遭って「まぁそんなもんか」と思ってきたこと、「全然平気ー!」と笑い飛ばしてきたこと。
あなたは悪くない。
後輩たちに「あなたも耐えなさい」と彼女たちが言ってきたことを誰が責められるだろうか。

でも、もうやめよう。
ここでおわりにしよう。
これからは「まぁ、そんなもんか」で終わらせてはいけない。
この問題は、テレ朝だけの問題でもメディアの世界だけの問題でもない。
支持政党がどこだとか、誰のことが嫌いかとかも関係ない。
私たちみんなの問題だ。

あなたはどうだっただろうか?
セクハラ・パワハラの被害に遭ったことは本当にないだろうか。
笑い話にしていたこと、自分で望んでやったと思っていたこと。本当にそうだっただろうか。
もしくは、セクハラ・パワハラをしてしまったことはないだろうか。
見て見ぬフリをしたことはないだろうか。

これからはどうしようか?
私は、あなたはセクハラを見かけたらこれからはどうするか。
あなたが会社の偉い人なら、社内のセクハラ被害はどれほどあるだろうか。これからはどう対策するのか。
私たちは何ができるだろうか。

これは、私たちみんなの問題だ。